【第10話】戸惑いの排卵期ブルース|妊活乙女たちの華麗なる日々

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【人物相関図】

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第10話 ~戸惑いの排卵期ブルース~

ゴロゴロゴロ・・・

嫌な天気ね・・・。


いよいよ明日退院の予定となったマチ子。
その心はこの暗雲のように重く、垂れ込めていた。

一体どんな顔をして優一さんに会ったらいいのかしら・・・。


あの日以来、優一は約束どおりその姿を見せることはなかった。だがそれもたった数日のこと。明日には優一が待つ自宅に帰ることになる。
心の整理をするにはあまりに短く、マチ子は結局何一つ答えを見つけられていないままだ。
そんな焦りとは裏腹に、頭は何かを思考することを拒んでいる。
単純作業である荷物の整理すらままならないほどに。

ああ・・・だめ。少し気分転換してこようかな。


消灯時間を2時間ほど過ぎた病院の廊下は人気がなく、どこか肌寒かった。
静まり返ったそこに不思議なほど物音は一切ない。ただ時々、遠雷が低く轟くだけだ。

落ち着かない気持ちのまま、マチ子は足の向くままに歩き出した。
ふと気がつけば、屋上入り口まで来ている。
まもなくあの雷雲が雨を連れてくるだろう。
そうと分かっていても、マチ子は屋上入り口のドアに手をかけた。

あ、雨・・・。


思ったよりも早く、雨脚はここに届いたようだ。
ポツリポツリと、まだ小さな雨粒がマチ子の肌に当たる。

・・・誰かいる・・・?


真夜中に、しかも雷鳴が轟く夜に、屋上に出向く者など自分だけだと思っていたマチ子は驚いてその姿を凝視した。
ベンチに肩を落として腰掛けるその姿はどことなく見覚えがある―。

・・・あおい?


振り返ったその顔も、マチ子と同様に驚きと困惑の色を浮かべていた。

マチ子・・・。
驚いた、どうしてここに?


それはこっちのセリフよ!どうしてあなたが・・・もしかして葵が勤めている病院って・・・?


そう、ここだよ。


葵は困ったような笑みを浮かべて答えた。

君がこの病院に入院していることは知っていたんだ。
お見舞いにも行かずにごめん。どんな顔をして会ったらいいのか・・・。


そういえば、あやめは元気?


表情を曇らせる葵から目を逸らし、マチ子はその言葉を遮るように聞いた。

・・・あぁ、元気だよ。どこかに遊びに連れて行けって毎日せがまれる。


なぁんだ、うまくいってるみたいね!心配してソンしちゃった!


心配?


そりゃそうよ!あやめは私の親友ですもの。
旦那様とうまくいってるかどうか心配もするわよ。


・・・。


・・・うまくいってるんでしょ?・・・もう心配しないわよ、私。


君に心配は掛けたくはない。あやめとはうまくやっている―、そう言ってあげたい・・・。


あおい・・・。


・・・努力はしている。あやめを愛せるように必死に努力を・・・だけど・・・。


だめよ、葵。それ以上言ってはダメ・・・。


心に浮かぶんだ、君の顔が。途端に苦しくなる、息が出来ないほどに・・・。


だめよ、葵。お願い、もう何も言わないで!


昔の僕たちに戻れたらどれだけ幸せだろうか・・・。
マチ子、僕はやっぱり・・・。



ピカッ!ドドーン!!

キャッ!


突然の雷鳴に驚いたマチ子は、思わず葵の胸に飛び込んだ。

ごめんなさい、私・・・。


マチ子・・・。



あおい・・・。


雨が強くなってきたね・・・部屋へ戻ろう。


そう言われてマチ子ははじめて、叩きつけるように降る雨音に気がついた。
濡れて凍えるマチ子の細い肩を、葵はそっと支えた。

仁勝園家―。

葵!葵はまだ帰らないのっ!


―ただいま。


葵っ!遅かったじゃないのっ!


すまない・・・気になる患者が・・・。


そんなことどうでもいいのよ!葵、今日が何の日か分かるわよね?


・・・?


葵ったら!あなた医者なのにそんなことも分からないの?!


そう言って声高に笑うと、あやめは手に持っているものを葵の目の前に突きつけた。

・・・なんだい?これ・・・。


排卵検査薬に決まってるでしょっ!
ねぇ見て!これよ!これっ!


あやめが指指すスティックの先には2本のラインが浮かんでいる。

陽性ラインよ・・・!


陽性・・・?


葵はハッとした顔であやめを見た。
あやめはにやりと笑うと、葵の首に腕を絡めた。

この日をどんなに待っていたか、分かる?
毎日毎日、1時間おきに排卵検査薬を試してきたのよ!
やっとよ・・・!やっと排卵したの・・・!さぁ、今すぐ私を抱いてちょうだい。


・・・あやめ。


あなたとの子供を作るのよ!卵子の寿命は24時間。受精可能な時間はもっと短いとも言われているわ・・・!
だから、急いで!ね、葵!


待ってくれ、あやめ・・・。


葵の言葉など耳に入らないかのように、あやめは葵の服を脱がす事に必死だった。

さあ!あなたとの子供を作るのよっ・・・!何してるの?さっさとはじめてちょうだい!もう時間がないのよっ!


・・・無理なんだ・・・。


は?!


僕には出来ない・・・。


何を言ってるの?冗談を言っている暇は無いのよ・・・!


冗談なんかじゃない・・・。立たないんだ・・・。物理的に無理なんだよ。


物理的に無理ですって~!!そんな戯言が通用すると思っているのっ!


あやめ・・・すまない・・・。


貪るように身を重ねようとするあやめに、葵はただその無気力な体を差し出すことしか出来なかった―。

その頃―。


退院おめでとう、マチ子。


あ、ありがとう。優一さん・・・。


大事に至らなくて本当によかった。


ええ・・・。


たった数日顔を合わせなかっただけなのに、
マチ子は優一との間に今までになかったぎこちなさを感じていた。
それは優一もまた同じことだった。

・・・そうだ!私、ケーキを買ってきたのよ。退院祝いだもの、ちょっと高いのを選んじゃった。今、切るわね。


そう言うと、マチ子はそそくさと優一に背を向けた。

・・・マチ子。


なぁに?


薬缶を火にかけながら、マチ子は答えた。

なぜ、あんなところに一人で行ったんだい?


・・・それは・・・。


・・・俺には答えられない理由があるのか?


そうじゃない!なんてゆうか、その・・・。


・・・思い出の場所?


・・・!


・・・あやめさんに聞いた。
あの教会は君にとってはとても大切な場所なんだね。


嫌だ・・・!昔のことよ!私はただなんとなく懐かしくて、それで・・・。


・・・それで?


それで、教会をのぞいただけ・・・それだけよ・・・。


・・・そう。


優一は立ち上がると、ゆっくりとマチ子に近づいた。

・・・君は嘘をつく時、必ず背中を向ける。


・・・!嘘なんか・・・。


俺なりにこの6年間、君を見てきたつもりだ。嘘じゃないというのなら、俺の目を見てもう一度話して。


優一の手がマチ子を振りかえさせる。
まっすぐな優一の視線にマチ子は思わず視線を逸らした。

私は・・・嘘なんか・・・。



俺を愛していると言えるか?


優一さん・・・。


俺を愛しているのなら、子供を作ろう。


そう言うと、優一は服を脱ぎ始めた。

な、何も今すぐじゃなくても・・・。


俺を愛しているんだろ?だったら・・・。


止めて!


優一の手を振りほどいたマチ子は、そのまま外へと飛びだした。

・・・自由になれ、マチ子。


入梅した初夏の夜空は星の一つも見えない。
切れ目のない暗雲は、空に月があった事を忘れさせるほど重く深く、夜空に溶け込んでいた。

~続く~
退院し、それぞれが戻るべき場所へ帰ったはずなのに―。
狂い始めた歯車は、次第に多くを巻き込んで乱れていく―。

第11話「AIH・IVFという名の選択肢(上)」に続く!

今回も登場ならずのフクです。


20~40代のEDは心の問題によるところが大きい

男性はデリケートな一面があります。
ED(勃起不全)には「機能的側面」と「心理的側面」があると言われていますが、
20~40代に起こるEDの場合、「心理的側面」が影響していることが多いようです。(=心因性ED)

妊活中の女性にとっては待ちに待った排卵日。
ですが、それはパートナーにとっては思わぬプレッシャーになることも。

子供が欲しいという気持ちは同じであっても、
それが「排卵日にセックスする」という現実的な意味を持つことで、
「うまく精子が出なかったらどうしよう・・・」
「義務的になっている」
と感じ、結果EDに繋がるというケースは決して少なくありません。

不妊治療に伴うEDが急増中

排卵日のプレッシャーのほかに、
不妊治療を始めてからは「運動率が悪い」「精子数が少ない」などの診断が自信喪失に繋がり、
EDを引き起こすケースが急増しているそうです。

妊活中の女性にとって、排卵日にタイミングを取れない事は大きなストレスかもしれません。
だけど、そのストレスをパートナーにぶつけてしまっては悪循環です。
パートナーがEDになってしまった場合、女性ができることはなんでしょうか?

EDの治療法

【投薬治療】
心因性EDの場合にも投薬は有効です。
PDE5 阻害薬(バイアグラ・レビトラ・シアリス)などは日本でも認可されております。

ですが、現時点ではまだ保険適用薬ではありません。
バイアグラなどはネット通販でも入手できるようですが、心拍出量の増加に伴い、循環器系に負担がかかる可能性があります。
よって、既往歴(特に心疾患)や、服用方法によっては命に関わる重篤な副作用を起こす可能性は否定できません。

PDE5阻害薬にチャレンジしたい場合には、まずは専門医に相談しましょう。

ちなみに、PDE5阻害薬はED治療薬の保険適用についての動きがあるようですが、現時点では定かではありません。
そのため、1錠あたり1,500~2,000円と高額です。

【心理的サポート】
心因性EDはそのプレッシャーやストレスの改善とともに軽快することも少なくありません。
女性側としては、排卵日を伝えない、射精できなかったことを責めないなど、相手を思いやる姿勢を見せることも大切。

ストレスが軽減され、正常に勃起、射精ができるようになると、それ自体が男性にとっての「自信」になります。
これを繰り返すことで、心因性EDの克服に繋がります。

一進一退に見える場合でも焦らないのが大切です。

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