【序章】愛は嵐とともに|妊活乙女たちの華麗なる日々



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【人物相関図】

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序章 ~嵐の予感~

ねえ。これ、あげる。


なあに?


ゆびわだよ。


わぁ、きれい・・・!


「コンヤクユビワ」っていうんだ。


コンヤク・・・?



大きくなったら僕のお嫁さんになってよ。


・・・うん!


二人だけの秘密だよ。


わかった。二人だけの秘密ね・・・。


それから24年―。

おはよう、優一さん。はいこれ、お弁当。


・・・・ありがとう。


私も今日は早番なの。もう少ししたら出るわね。


・・・・すまないな。


え?


いや、なんでもない。
俺ももう行くよ。


・・・・・いってらっしゃい・・・。


マチ子は28歳の時に、親の強引な勧めで優一と結婚した。
一族安泰のためには、経済的に大きな助けとなる米尾財閥との結婚は必要不可欠であり、いわゆる「政略結婚」であった。
最初は受け入れられなかったマチ子であったが、優一の優しさに触れ、いつしか心を開くように―。
そしてマチ子との結婚の半年後、優一は病に倒れた父の跡を継ぎ、大手輸入会社「oiio」の社長に就任した。

しかし世の中は歴史的な円安。
すでに傾きかけていた会社は、優一を判断下す間もなく倒産した―。
優一の社長就任からわずか数ヶ月後の出来事だった・・・。

私もぐずぐずしていられないわ。急がないと・・・あら?手紙・・・?



・・・あやめからだわ・・・。



あやめ、戻ってくるのね。・・・そしても・・・。


マチ子は物憂いげにその手紙を見つめていたが、はっと我に返り時計を見ると、慌ててアパートを飛び出した。

数日後―。

久しぶりね、マチ子!


お久しぶり。


急に呼び出してしまってごめんなさいね。
日本に戻ると決めたらやっぱりあなたに会いたくなってしまったの。本当に嬉しいわ~!


私もよ、あやめ。


ところで、マチ子。
あなたたち子供は作らないの?


え?!な、何を急に・・・。


あら、驚くことないじゃない。
マチ子、結婚して何年目よ?


・・・6年目・・・かな。


そうよね。
私達が結婚したのがマチ子達の1年後だもの。
子供の事を考える時期としては遅いくらいじゃない。


・・・・そうね。そうかもしれないけど・・・。


マチ子は結婚後のこれまでの経緯をあやめに打ち明けた。
優一の会社が倒産したこと、それ以来優一は口数が減り、笑顔など見ることもなくなったこと―。
あやめ達が渡米した後に起きた出来事すべてをマチ子は話した。
黙って聞いていたあやめだったが、マチ子の話が終わると同時にはっきりとした声でこう言った。

・・・ばかね。


・・・え?


そんなの別れちゃえばいいのよ。


で、でも・・・


元々、親の都合で結婚したんじゃない。
会社がなくなっちゃったんだもの、これ以上親に義理立てする必要はないわよ。


そうじゃないの・・・。
両親は会社が倒産したら手のひらを返したように、私に離婚をすすめたわ。
だけど、私が優一さんを支えたいと思っているのよ。


あらあら、健気なこと。


・・・あやめ・・・。


だったらいい方法を教えてあげるわ。
大事な大事な優一さんを助けてあげたかったら今すぐ子供を作ることよ。
そうすれば、優一さんにはマチ子以上に守らなくてはならないものができる。
それが優一さんを今ある苦悩から救ってくれるんじゃないかしら。


子供なんて無理よ・・・こんな状態だもの・・・。


こんな状態だからこそ子供が必要なんじゃない。


・・・・。


だったら、聞いてみれば。


え?


だから、優一さんに直接聞いてみるのよ。
子供が欲しいかどうか。


そんなの・・・、今のあの人がYESと言うわけがないわ。


そうかしら。


・・・ところで、アメリカでの暮らしはどうだったの?
4年も日本を離れていたんだもの。
向こうでのこと、色々聞きたいわ。


マチ子は話題を変えようと、そう切り出した。

そうねぇ。
葵とのアメリカでの生活はとても充実していたわ。


そう。素敵ね。


日本にいる時よりもずっと自由な時間が取れたの。
二人でよく映画を見に行ったり、ドライブをしたり。オーシャンシティのビーチにもよく出掛けたわ。
葵も日本にいる時よりずっと笑ってた。
幸せに満ちた顔をしていたわ。


うっとりと話すあやめとは対照的に、マチ子の心に薄暗い靄が掛かり始めていた。
マチ子は、こんな話題を選んでしまった自分を悔やんだ。

・・・もう充分に二人だけの時間を楽しんだって思ってる。
だから私、決めたのよ。


何を?


うふふ、と微笑んだあやめはこういった。

私、葵との間に子供が欲しいのよ。



・・・・


結婚して5年。
もう子供がいたって不思議じゃないわよね。


・・・そう、ね・・・。


年齢だって、もう34よ。
よく35歳を過ぎると卵子が老化する、なんてテレビで言ってるじゃない。
それに、親の言いなりにはなりたくないけど、葵のご両親も家の両親も孫の顔を見たがっているわ。
実家に戻るたびに「子供はまだか」って言われるのにもいい加減うんざりだしね。


・・・そうなの・・・


だからね、妊活をしようって決めたの。
そこで提案なんだけどマチ子。一緒に妊活しない?


えぇ?!一緒に?!


そう。ひとりでやっても張り合いがないじゃない。それに授かった時にママ友も欲しいの。マチ子なら幼馴染で気心も知れているし、ママ友としても最適だって思うのよ。
だからお願い!一緒に赤ちゃん作ろっ!


ちょ、、ちょっと待ってよ。
一緒にって・・・。子供はすぐ出来るとは限らないし、妊活と言っても何をするかも全然分からないわよ。
第一、優一さんがなんと言うか・・・。


だから、確認するんじゃない!いい、マチ子。
今夜絶対に優一さんに聞くのよ。子供が欲しいかどうか。絶対よ!


だから、こんな状態じゃ、優一さんが子供を欲しがるはずは・・・。


いいから!絶対聞いてね!


あやめが強引なのはいつものことだ。
しかし、子供となると話は別だ。あやめに合わせて「妊活」なるものに取り組む必要なんてない。
だけど・・・。
マチ子の心にはあやめの一言が引っかかっていた。

大事な大事な優一さんを助けてあげたかったら今すぐ子供を作ることよ。
そうすれば、優一さんにはマチ子以上に守らなくてはならないものができる。
それが優一さんを今ある苦悩から救ってくれるんじゃないかしら。


本当にそうなのだろうか。
本当に優一さんを救ってあげられるのだとしたら―。
マチ子の心はさざ波のようにざわめき立っていた。

その夜―。

・・・ただいま。


あ・・・おかえりなさい。


今日は疲れたよ。
シャワーを浴びたら先に休ませてもらうよ。


あ・・・うん。お疲れ様。


・・・どうかしたのかい?


優一はなんとなく歯切れの悪いマチ子の様子が気になった。

ううん、なんでもないの、なんでも・・・


でもなんだかいつもの君と違う。


・・・そんな事・・・。
ただ、今日4年ぶりに幼馴染のあやめに会ったの。そしたらね、あやめが・・・。


・・・あやめさんがどうかしたの。


マチ子は一瞬躊躇したが、思い切って切り出した。

あやめに「子供は作らないのか」って聞かれたの。


・・・それで?


結婚して6年も経ってるんだから、子供の事を考えないのは不自然じゃないかって。
それで、あの・・・・優一さんにどう思っているか聞いてみろって・・・。


・・・・。


・・・。そ、そうよね。
子供なんて考えられないわよね・・・。ごめんなさい、気にし・・・


欲しいよ。


・・・え?


俺はマチ子との子供が欲しい。
ずっとそう思っていた。


優一さん・・・


~続く~

意外な優一の言葉に戸惑うマチ子。
それは会社倒産後、初めて優一の気持ちを聞けた気がした瞬間でもあった。
マチ子は優一の言葉を受けて、妊活開始となるのか―。

第1話「聖なる妊活マイスター、現る?!」に続く!

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